いつも通る道路が工事中なら、別な道を通って迂回するしかない。

業務ネットワークなどでは、回線に障害が発生しても、迂回路を使って通信が途絶えないようにしたい場合がある。 このように迂回を許したネットワークを、冗長経路のあるネットワークという。

しかし、パケットは常にルーティングテーブルに従って流れるため、障害発生時でもいつもの道を通ろうとしてしまう。 パケットが迂回路を流れるようにするには、障害発生時にルーティングテーブルが変更される必要がある。

もしも静的経路制御なら、管理者が常にネットワークを見張って、障害発生時に素早くルーティングテーブルを修正しなければならない。

動的経路制御であれば、ルータが自動的に障害を検出して迂回路を通るルーティングテーブルに変更してくれる。 そのため、冗長経路のあるネットワークでは、動的経路制御を使うのが普通である。

しかし、迂回路を用意することによって閉回路(ループ)ができてしまうと、複数方向を示す「目的地はこちら」という情報が一点に集まってしまう。 結果、どれに従えばいいのかわからず、そのループをぐるぐる回るだけになってしまう場合がある。

こうなってしまうのは、ルータにとっての判断基準が少なすぎるからだ。 そこで、判断基準を追加してあげることにする。

目的地に行くまでにかかる時間は短いに越したことがないので、メトリックという何となくの距離感を表す数値を導入し、この値が最小になるように経路を選択せよ、という規則を追加するのだ。

メトリックは、ネットワーク間の実際の距離を測って算出するものではないため、論理的な距離とも呼ばれる。

一番簡単な例は、目的地までに経由するルータの数(ホップ数)をメトリック値とするというものだが、メトリック値の算出方法はルーティングプロトコルによって異なる。